花粉や黄砂の影響も弱まる5月は、すっきりと晴れる日も多く、星見には適した時期です。5月の星空と月内に見られる天文現象をご紹介しましょう。

5月は、暗くなって間もない時間帯に春の星座が夜空に勢揃いします。春の星座探しは北斗七星から。北を向いて頭の真上を見上げれば、ひしゃくの形に並んだ7つの星ならびが見つかります。それが北斗七星。ひしゃくの”柄”のカーブをそのまま伸ばしていくと見つかるオレンジ色の明るい星がうしかい座のアークトゥルス、さらにその先に見つかる白色の明るい星がおとめ座のスピカです。北斗七星からスピカへと続くカーブは「春の大曲線」と呼ばれます。

続いて5月の天文現象をご紹介しましょう。
【5月5日前後】火星とプレセぺ星団が接近
今年1月に地球と接近した火星。今はだいぶ地球から遠ざかり、地球からの距離は2億km強となりました。それでも明るさはちょうど1等級。まだまだ夜空で目立ちます。そんな火星がかに座にある散開星団M 44プレセぺ星団と(見かけ上)近づきます。最接近は5月5日ですが、5月2日~5月10日の1週間くらいは接近する様子が楽しめます。ただ、なるべく空が暗いところで、できれば双眼鏡で見るのがおすすめです。

【5月7日】土星の環が消える!?
土星といえば壮麗な環(リング)が特徴的ですが、昨年から今年にかけては環が見にくい状態が続いています。これは、土星の環がたいへん薄く、また地球から見て土星の環の傾きが変化するためです。そしておおよそ15年に2~3回、土星の環が見えなくなる現象が起こります。これを土星環の消失といいます。下の画像は1995年8月10日に撮影した環が消失した土星です。

土星環の消失には2種類あります。地球から見て土星の環の傾きが0になる=土星の環を真横から見るケースと、土星の環の傾きが太陽に対して0になる=太陽の光が土星の環を真横から照らすケースです。5月7日は後者にあたります(前者は3月24日に起こりました)。
ただ、今の時期、土星が見えるのは明け方の東の超低空です。金星がすぐ近くに見えているので目印になりそうですが、東の空が開けた場所でないと見えません。あらかじめ観察地を下調べしておきましょう。あ、そもそも土星の環はもともと望遠鏡でないと見ることができませんので、ご注意ください。

5月に見やすい一推しの天体も紹介しましょう。
からす座の3等星アルゴラブです(下の画像の矢印の先の星)。私たちの目では1つにしか見えない星ですが、望遠鏡で見ると2つの星が寄り添って見えます。このような星を二重星といいます。明るい方の星を主星、暗い方の星を伴星といいますが、この伴星はしばしば藤色に見えると言われます。とっても美しいペアです。博物館の「星を見る会」でもお見せする機会があると思います。ご期待ください。
