近ごろはすっきりと晴れる日がめっきり減ってしまいました。早くも梅雨入りしたようなお天気が続いていますが、梅雨の間の晴天は、空気中の塵などが雨によって流されて、空が澄み星がよく見えるようになります。貴重な晴れ間を逃さないようにしましょう。では、6月の星空と月内に見られる天文現象をご紹介します。

6月ともなると、春の星座たちが徐々に西の空に傾き始め、宵であっても東の空に夏の星座たちを見ることができるようになります。「5月の星空」でも紹介した北斗七星や「春の大曲線」はまだまだ見頃です。引き続き、北斗七星を使って様々な星や星座を探してみましょう。
まずは今“話題”のかんむり座。北斗七星の“柄”の先から3番目の星(ε星アリオト)と“柄”の先から1番目の星(η星アルカイド)をつなぎ、そのまま伸ばしていくとかんむり座でもっとも明るい星(α星アルフェッカ)が見つかります。かんむり座のほかの星は明るくても3.7等星なので、市街地だと見つけづらいです。アルフェッカが見つかったら、それで良しとしましょう。
北斗七星のひしゃくの水を入れるところ(合と呼ぶそうです)をつくる星のうち、先端の星(α星ドゥベ)とその対角にある星(γ星フェクダ)をつないで伸ばしていくと、今度はりょうけん座のコルカロリという星を見つけることができます。2.9等星なので明るい星というわけではありませんが、まわりに明るい星が少ないので意外と目立ちます。望遠鏡で覗くと2つの星が寄り添っているように見える「二重星」です。しばしば当館の「星を見る会」でも観望対象に取り上げますので、ぜひ見にきてください。落ち着いた美しさがあります。

続いて6月の天文現象をご紹介しましょう。
【6月17日】火星とレグルスが接近
かなり地球から遠ざかった火星としし座の1等星レグルスが(見かけ上)かなり近づきます。この日の火星の明るさは1.4等、偶然にもレグルスと同じ明るさで輝きます。赤く見える火星に対しレグルスは青白く見える星。色の対比が美しいでしょう。肉眼でも十分に楽しめますが、双眼鏡があるとなおいいですね。一般的な双眼鏡であれば火星とレグルスが同視野に入るはずです。

【6月21日】夏至
天文現象という感じではないですが……6月21日が夏至です。太陽の南中高度が1年でもっとも高くなり、太陽が昼の空に出ている時間が長い……つまり1年で昼がもっとも長く夜がもっとも短い、そんな日です。太陽の南中高度が高いということは、影が短くなるということ。晴れていたらぜひ自分の影の写真を撮ってみてください(画像は2020年の夏至の日に撮影したもの……薄曇りだったので影の輪郭がはっきりしませんが……)。そして12月まで待って、冬至のときと比べてみましょう。意外と影の長さが変わる、と思えるかもしれません。

6月に見やすい、というか、いま話題の天体も紹介しましょう。
かんむり座T星です(下の画像の矢印の先の星)。普段は肉眼ではまったく見ることができない明るさの星ですが、“まもなく”爆発して明るくなると言われています(おおよそアルフェッカと同じくらいの明るさにはなると予想されています)。オリオン座のベテルギウスみたいに“もうすぐ”って言っても10万年以内みたいな感じじゃないの?って思われるかもしれませんが、かんむり座T星の場合は本当に“もうすぐ”なんです。約80年ごとに爆発する「反復新星」と呼ばれる星で、これまでの周期から考えると1、2年以内に爆発する可能性が高いです。ただ爆発しても明るく見える期間はたった2日程度です。これから梅雨に入ることを考えると雲や雨に遮られてしまう可能性もありそうですが、だからこそ晴れた夜には、ぜひかんむり座を見上げて、見慣れない明るい星がないかどうかたしかめてみてくださいね。
