12月6日(金)まで開催中の寄贈品コーナー「新着資料展-民俗・歴史-」。令和元年度に市民の皆様からご寄贈いただいた民俗・歴史分野の主な資料を展示しています。

 作家・井伏鱒二氏の生原稿、第二次世界大戦中の出征幟、大相撲の板番付、中原で使用された昭和の農機具などを展示しています。

 ここで紹介するのは「鬼の念仏」木像です。大正時代中頃(1920年頃)に、須賀港に来ていた大型船の船乗りが古物商に売ったものを旧須賀村の旧家が買ったもので、元々は船の魔除けだったそうですが、子供の夜泣き封じに用いられ、不思議なくらい効き目があったといわれます。 

 高さが1m近くもある木像で、唐傘を背負い、胸に鉦をさげ、右手に撞木、左手に「奉加帳」を持っています。製作年代は江戸時代後期とみられます。

 このモチーフは、東海道の大津宿(現・滋賀県大津市)で土産物として制作販売されていた大津絵の「鬼の念仏」とぴったり一致します。大津絵の「鬼の念仏」も「夜泣き封じ」や「魔除け」に効能があるとされ、護符として用いられていました。

 したがって、この像は大津絵の「鬼の念仏」の彫像ということになります。「鬼の念仏」の彫像は、大津市内に存在するものの他、海外コレクターが所有するものを含めても十数体しか確認されていないたいへん珍しいものです。これらの彫像はいずれも40㎝以下の小さなものであるのに対し、本資料は並外れて背丈が高い唯一の作例となります。その造像目的は、大津絵販売店の看板用置物であったと推測されています。

 それにしても、大正時代にいかなる運命をたどって、大津から遠く離れた須賀の港へ「鬼の念仏」がもたらされたのでしょうか?