プラネタリウムのドーム空間を利用して、近年では様々なドーム映像作品が制作されています。「科学」と「美術」をつなぐ映像表現の試みを、講座としてご紹介しました。定員40名のところ、45名以上のご参加をいただき、目の当たりにするドーム映像の迫力に「びっくりした!」「おもしろかった!」という声をたくさんいただきました。

第1回目は2020年1月11日(土)開催。

 初回の講師は、鳫宏道(ガンヒロミチ)前平塚市博物館長。1976年の開館時から、博物館のプラネタリウムと関わってきた鳫氏は、映像表現の進化を中心にレクチャーを展開。現実には人間が見ることができない、宇宙の様々な現象を、ドーム映像が視覚化し、表現する力を持っていることを語られました。

第2回目は1月19日(日)開催。
テーマは「ドーム空間で描く科学映像の新視点~HAYABUSAで描きたかったこと」
ドーム上に直接、映像のラフスケッチをするという、制作のステップを解説中。

 続く第2回目の講師は、上坂浩光(コウサカヒロミツ)監督。3月に公開予定の「HAYABUSA2~REBORN」制作で大変お忙しいなか、博物館までお越しいただきました「科学で人を感動させる」をテーマに映像表現をされている監督、撮影現場の様子や制作の裏話、そして最新作にかける想いを熱く伝えてくださいました。 ドーム空間が持つ魅力はその「没入感」にあり、そこで投影される表現は、深く人の心に届きやすいと、その可能性を語られました。

第3回は2月2日(日)開催。
テーマは「アートとしてのドーム空間~没入感が生み出す時間と身体」

 最終回は、映像作家の飯田将茂(イイダマサシゲ)氏が登場。「アートの文脈のなかで〈身体〉がテーマのドーム映像をいかに位置づけていくか?」をテーマに、ドーム映像作品を制作されています。放射能や病原菌など、目に見えないけれど確かに存在するものへのアプローチから始まって、現代では失いがちな「身体性」を再認識する試みを話されました。

 ドーム空間の魅力は、やはりその〈没入感〉にあり、身体を存在感をもって表現できるとのこと。講座の最後は、最新作「HIRUKO」から、舞踏家・最上和子氏が中空に浮かぶ、10分にわたる静謐な映像で締めくくられました。