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相模川の生い立ちを探る会 第176回 2006年10月 「明神ヶ岳火山は存在するか」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第176回 2006年10月15日 明神ヶ岳


■テーマ:明神ヶ岳火山は存在するか
■コース:宮城野橋~明神ヶ岳~明神平~宮城野

今月は箱根外輪山の明神ヶ岳に登り、最近、話題になっている箱根複合成層火山説について、検証しました。近年、高橋正樹氏 (現日本大学) により、箱根火山は一つの大きな成層火山ではなく、複数の成層火山が円形に配列しているという説が出されています(高橋ほか,1999 など)。これによれば明神ヶ岳には明神ヶ岳火山があるということで、その根拠がどんなところにあるのかを目的に観察しました。
 明神ヶ岳への登山道は黒土と古富士起源の赤土が表層を厚く覆っていました。登山道を登るにつれ何枚もの溶岩流と火砕岩が露出しているのが観察できました。その一部には1 m大の火山弾を含む集塊岩が分布し、数 m大の火山弾も見つかりました。こうした大きさの火山弾は近くに火口が存在したことを示唆し、明神ヶ岳火山の存在が推定されました。火山弾を含む集塊岩は薄い溶岩流と互層していました。溶岩は斑晶の少ない輝石安山岩ですが、カンラン石の斑晶に富む輝石安山岩も見られました。溶岩や火砕岩の堆積構造から火口の方位を考えると、現在の明神ヶ岳より南側に存在したものと考えられました。したがって、高橋氏の新説を裏付ける結果となりました。南側の急崖部がカルデラ縁であることについては、その後の形成と考えられています。  (S. M. )
文献:
高橋正樹・長井雅史・内藤昌平・中村直子 (1999) 箱根火山の形成史と広域テクトニクス場.月刊地球,21, 437-446.
                    

輝石安山岩の溶岩流 高温で酸化した火砕岩
▲登山道沿いに見られる輝石安山岩の溶岩流。溶岩の流れた流理が見える。 ▲高温で酸化した火砕岩の露頭。
周辺急冷層を持つ火山弾 金時へ続く古期外輪山の尾根
▲火山弾の断面。周辺が急冷しているのがわかる。 ▲古期外輪山の尾根と金時山。その背景に富士がよく見えた。
大きな火山弾 尾根沿いのススキの登山道
▲表面がひび割れた大きな火山弾。 ▲尾根沿いの登山道を歩く会員。
成層構造の観察 山頂崖の成層構造
▲明神ヶ岳の成層構造を観察する。 ▲山頂の崖には溶岩流と火砕岩が互層しているのがよく見える。


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