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相模川の生い立ちを探る会 第153回 2004年9月 「衝突による礫岩の山 岩殿山」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第153回 2004年9月11日 象の鼻・岩殿山・兜岩



■ テーマ:衝突による礫岩の山 岩殿山
■ コース:大月市象の鼻~岩殿山~筑坂峠~兜岩

 今回は第151回の足和田山礫岩層に続き、衝突境界のトラフを埋めた岩殿山礫岩層を観察しました。大月駅前で森先生から観察ポイントやコースなどの説明を受け、目の前に迫る岩殿山を仰ぎながら東へ進みました。
 桂川にかかる高月橋の手前で、左岸の橋脚脇から河床まで高さ30 m程ある露頭を遠望しました。露頭の一部は六角の面が水平に横たわるように柱状節理が発達しており、日向(ひなて)安山岩中の岩脈のように思われました。河床には縞の発達した凝灰岩(猿橋デイサイト質火山礫凝灰岩層)が観察でき、 丹沢層群の煤ヶ谷亜層群に対比されるとのことでした。橋を渡ったところには、日向安山岩のハイアロクラスタイトからなる露頭があり、先ほど遠望した左岸上部の露頭につながるようでした。ハイアロクラスタイトは間近で観察すると斜長石に富む輝石安山岩角礫からなっていました。
 高月橋から上流に向かって少し行ったところから川に降りたところが、象の鼻と呼ばれているところで、デイサイト質凝灰岩(猿橋層)が傾斜して長く河床に延び、まさに象の鼻のようでした。この猿橋層の上位には、富士山から流れた溶岩流が2枚観察されました。上の溶岩は柱状節理が発達した溶岩で、8500年前の猿橋溶岩とのことです。下の溶岩は、黒く緻密なガラス質の溶岩でした。溶岩流の下部には河床礫をはさむことから、溶岩が河床を流れ下ったことがうかがえました。これらの地層の形成過程について、まず猿橋層を日向安山岩溶岩(ハイアロクラスタイト)が覆い、それを桂川が削って谷が形成され、その谷に猿橋溶岩が流れたものと、先生から解説がありました。
 岩殿山登山道に入るとまもなく、輝石安山岩溶岩の露頭(日向安山岩)がありました。登るにつれて、火山角礫岩、溶岩、ハイアロクラスタイトが順に観察されました。丸山公園の看板がある付近より、露頭は礫岩層(岩殿山礫岩層)に変わりました。中礫からなる礫岩層は砂岩層を挟み層理が見えました。礫は扁平で円磨度の高い海浜礫で、細粒部にはタマネギ状構造もみられました。礫の並び方向(インブリケーション)は南北性東傾斜で、このことより海が東側にあったことがわかるとのことです。頂上に近づくと登山道には大きな礫岩の転石がゴロゴロしていました。 円磨度は高いが淘汰の悪い礫岩層に変わってきました。含まれている礫には関東山地の四万十帯を構成する小仏層群起源の砂岩・頁岩が目立ち、丹沢起源の礫が見あたりません。このことは岩殿山礫岩層が関東山地由来の砕屑物がトラフを充填した堆積物であることを示しています。山頂の見晴台からの眺めは絶景で、大月市街・桂川の河岸段丘・高川山などを展望しました。
 岩殿山から天神山に向かう登山道は倒木が多く余り人が通らないようです。筑坂峠の先にある兜岩をよじ登り、天神山の上に立つ鉄塔の見えるところで、また大きな壁に当たりました。この礫岩露頭には巨大なタマネギ状構造がみられ、一枚岩が垂直に立っているように見えました。この場所には鎖が渡してあり登山道になってはいますが、極めて狭く、この先にも危険箇所があるとの案内板があったため、稚児落としに行くのを断念し、ここで筑坂峠に引き返して下山することにしました。

文献:平塚市博物館(2003) 身近な地学ハイキング.64p.
                    

岩殿山は一枚岩のように見える 高月橋のかかる露頭上部には日向安山岩の岩脈状をなす六角柱状節理が顕著に見える
▲大月市街地から岩殿山を望む。厚い一枚岩のように見える。 ▲高月橋のかかる露頭上部には日向安山岩の岩脈状をなす六角柱状節理が顕著に見える。
桂川河床に露出する猿橋デイサイト質火山礫凝灰岩 高月橋際の安山岩質ハイアロクラスタイト
▲桂川の河床には縞状の猿橋デイサイト質火山礫凝灰岩層が露出。 ▲高月橋際では安山岩質なハイアロクラスタイト(日向安山岩層)が観察された。(高月橋際)
象の鼻のように見える猿橋デイサイト質凝灰岩層 中礫からなる礫岩層は砂岩層を挟む
▲高月橋上流の象の鼻でみられる猿橋デイサイト質凝灰岩層とそれを覆う猿橋溶岩(富士溶岩)(桂川沿い) ▲中礫からなる礫岩層は砂岩層を挟む。丹沢が衝突したことにより、隆起した関東山地から運ばれた礫岩からなる。(岩殿山登山道)
岩殿山礫岩層は扁平で円磨度が高い海浜礫 中世の山城である岩殿城は自然の地形を巧みに利用している
▲岩殿山礫岩層は扁平で円磨度が高い海浜礫で、インブリケーションが見られた。(岩殿山登山道) ▲中世の山城である岩殿城は自然の地形を巧みに利用している。大岩は全て礫岩。(揚城戸門)
山頂から大月市街、桂川の谷を望む 兜岩の急峻な鎖場をよじ登る
▲山頂から大月市街地、桂川の谷を望む。本当の岩殿山山頂はさらに先にある。(岩殿山山頂) ▲兜岩の急峻な鎖場をよじ登る。全て中礫の礫岩からなっている。
カニの横ばい歩きで通る切り立った登山道 大きなタマネギ状風化で、厚い皮が一枚剥がれたような亀裂が入る
▲カニの横ばい歩きで通る切り立った登山道(天神山手前) ▲大きな玉ネギ状風化で、厚い皮が1枚剥がれたような亀裂が入る(天神山手前)


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