わたしたちは「相模川流域の自然と文化」をテーマに活動している地域博物館です

おはち

食の民具たち 平成16年冬季特別展 (5 食卓の周り)

おはち

図録 平成16年1月発行

 おはちは桶の仲間である。一般的な桶と比べた場合、おはちには形状にいくつかの特徴が認められる。第一に被せ蓋が付いていることである。蓋を被せて密閉することで、乾燥と埃を防ぐことができ、ご飯の水分調整を自在に行うことができる。また、ある程度の温度も保たれる。おはちの蓋には写真88のハンダイのような乗せ蓋を用いる場合もあるが、市内で使われたおはちはすべて被せ蓋である。
 第二の特徴は、上げ底で、かつ側板下部を三カ所くり抜いて低い三本足にしていることである。これらは、底部の通気性を良くするためである。掲載資料の中では、写真84-2のおはちがきれいに三本足にくり抜かれている。ちらし寿司を作るハンダイは、上げ底と三本足がより顕著に認められる。
 第三の特徴は、タガに真鍮製の帯タガ、あるいは銅製の帯タガを用いている点である。古くは竹のねじりタガだったが、比較的新しい資料は真鍮製のタガを用いている。真鍮は光沢があり、錆びにくいのが特徴である。おはちは茶の間で使う容器であるから見映えも配慮したのではないかと思われる。
 ご飯籠はオハチザルとも呼よばれる。写真85のご飯籠は同じ家からの寄贈品であるが足の付け方が異なる。ご飯籠の足は、おはちよりも高い。また、マワシのヒゴは皮面を外側に向けて編むものが多いが、85-2のように皮面を内側に向けて編む場合もあり、中のご飯がこびりつきにくいように工夫したのではないかと推測される。 
 写真87のおはち入れは、藁で編んだ上を紙で覆っているのが珍しい。さらに保湿性をたかめるとともに、茶の間に、藁屑が散らからないようにするためだろうか。

真鍮(しんちゅう) 藁(わら)






ページの先頭へ