錦絵は、江戸時代から明治初期に流行した多色刷り版画です。相撲や風景、役者、時事などを題材に、庶民の関心をいきいきと伝えました。
1877年2月、政争に破れ鹿児島に帰っていた維新の英雄西郷隆盛は、旧薩摩藩や新政府の政治に不満を抱く周辺の士族を主力に、反抗の兵を挙げました。いわゆる西南戦争です。以後、9月24日に官軍の包囲を受けた西郷が自決するまで、九州各地で激しい戦いが繰り広げられました。このとき、大接近となった火星に軍服姿の西郷が見えたという風評が立ち、火星は巷間で「西郷星(さいごうぼし)」と呼ばれました。西郷は当時の体制から見れば「賊軍」ですが、その敗北に際し「西郷星」を生み出した点には、人々の彼を惜しむ気持ちが感じられます。 |
鹿児島征討記之内西郷星之図 楊洲斎(橋本)周延画 千葉市立郷土博物館蔵 |
1877年の地球と火星 9月初旬に距離約5600万kmとなった大接近。 西郷死後の9月下旬から10月にかけては宵の空で-2等以上で輝いたとみられる。 |
西郷星の珍説 永島辰五郎(歌川芳虎)画 千葉私立郷土博物館蔵 |