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発見!ひらつかの民俗 第6回 麻生不動のだるま市(2010年1月28日)

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第6回 麻生不動のだるま市(2010年1月28日調査)

 先月の飯泉観音に続き、だるま市の話題です。飯泉観音が関東最初のだるま市なら、1月28日に開かれる川崎区麻生区麻生不動のだるま市は、関東納めのだるま市として知られる。この二つのだるま市は県下で最も規模が大きい。実際には3月3、4日に開かれる東京都調布市深大寺のだるま市(日本三大だるま市の一)が関東納めの市であり、麻生不動は神奈川県最後のだるま市にあたる。

だるま市 だるまの品定め
▲だるま市の様子 ▲だるまの品定め

 平塚付近では暮の歳の市でだるまを買う人が多いが、県外では新春にだるま市が立つ。初詣や寺院の初縁日、商店街の初市にだるまが売られる。だるま市が立つような寺院は、古くから庶民の信仰を集めている。観音や不動の初縁日はとりわけ参詣者で賑わうので市が立ち、やがてそこにだるまも並ぶようになった。
 麻生不動は木賊(とくさ)不動とも呼ばれ、火伏せの不動として広く信仰を集めている。相模原市あたりからの参詣者も多く、御札をいただき、だるまを買っていく。麻生不動のお守りで特徴的なのは穴あき銭である。かつて相模原市域の農家では、イロリのオカギサマ(自在鉤)にこの穴あき銭を下げると火難除けになるといわれ、毎年初不動に新しい穴あき銭を交換に来た。現在も授与されている。

不動院 火伏せの穴あき銭
▲不動院 ▲火伏せの穴あき銭

 不動院のだるま市は朝8時から夕方5時まで立つ。この日は午前中の人出が多く、お昼前は通行できないくらい賑わったという。したがってだるまも景気よく売れたようだ。だるまの出店は25軒くらい。すべて相州だるま、平塚産である。平塚のだるま店やだるま商組合が出す店の他、地元の人たちが王鶴組合という組織を作り、平塚のだるまを仕入れて売り活動資金にしている。王鶴組合と四之宮の長嶋達磨店との関係はかなり古いという。

売買成立 手締め 火打ち石を切る
▲売買成立 手締め ▲火打ち石を切り、だるまに魂を入れる
地元王鶴組合 だるま納所
▲地元王鶴組合 ▲だるま納所

 境内の納所に相州だるまが山のように積まれていた。この中に「珍しいだるまがあるよ」と平塚のだるま屋さんが教えてくれた。「張り子だよ。多摩のだるま、瑞穂(町)のじゃないかな」と言う。今のだるまは真空成型で大量生産されるので、むかしのように木型に紙を貼って張り子から造るだるまには滅多にお目にかかれない。大きなだるまだが、張り子なので軽い。相州だるまとは顔かたちも異なる。だるま納所で待機している自治会の人たちが「よかったら持って帰りますか」と言ってくれたので、納めた方に申し訳ないが資料として持ち帰ることにする。そのだるまをビニールに入れて歩いていたら、平塚の別のだるま屋さんに「青梅のだるまじゃない?いや瑞穂かな」呼びとめられた。さすがだるま屋さんはお目が高い。

納所の相州だるま 収集した多摩?の張り子だるま
▲納所に積まれた相州だるま ▲資料として収集した多摩?の張り子だるま

 夕方になると店じまい。今シーズンのだるま市は終わった。秋から冬にかけ製造と販売に追われただるま屋さんも、これでやっと一息つける。

 

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