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第28回 相模川・相模湾水運と須賀村の繁栄 その8(廻船問屋の役割) (2011年7月号)


 前回は川船乗り・筏乗りの議定書から彼らの須賀・柳島での長逗留が懸念されていたことを見ました。そこからは須賀・柳島が彼らにとって賭博や遊興などの誘惑も含めて魅力ある繁華街だったことがうかがえます。今回からはその須賀の繁栄の中心にいた廻船問屋たちの実態に迫ってみたいと思います。とはいえ、彼ら須賀の廻船問屋に関係する史料は非常に少なく、周辺史料からうかがっていかざるをえません。
 さて、天明期(1781~1788)に発生した相模川通りの川船持ちと須賀村の18軒の廻船問屋との争論の史料によると、相模川通りの村々から出荷される荷物は「送り状ヲ以て、須賀浦ならびに柳島浦へ川下げいたし、相対仕り候船主へ荷物相送り、その者より請け取り印形差し出させ、すなわち請け取り候者の船居合い申し候はば、その者の船へ積み立て申すべく候」とあります。つまり、廻船問屋は荷主から荷物を受け取り、自分の所有する船に載せて目的地に輸送したといいます。ここから須賀の廻船問屋は物資の海上輸送の運賃を稼いでいたことが考えられ、その物品ごとの運賃一覧も残されています(『茅ヶ崎市史』1巻No87・91)。

宝永3年(1706)2月 金銀雑穀諸色改帳
宝永3年(1706)2月 金銀雑穀諸色改帳
 宝永3年に当主の米屋嘉兵衛当主がなくなったが、子の牛之助が幼少のため親類縁者立会のもと、土蔵内の米・味噌・塩などの諸商品や貸金・現金などの財産を調べた目録。総計1671両1分にものぼった(当館寄託)。

 しかし、須賀に残された廻船問屋の史料のうち米屋嘉兵衛の史料をみると、米穀商売、酢・味噌の醸造など、廻船業を背景に多角的な経営をおこなっていたことがうかがえます(当館寄託資料)。また、柳島村で廻船業を営んでいた藤間家も穀物商を営んでおり(『茅ヶ崎市史』1巻No94)、また、同家には廻船問屋を示す「積問屋」と記された店印のほかに「御茶所」・「白砂糖」などと刻印された店印も残されていることから茶の砂糖の仕入れ、販売をしていたこともわかります。須賀・柳島の廻船問屋は運賃積みだけでなく、買い積みもおこなっており、多角的な商売をしていたと考えられます。
 さらに、須賀・柳島の廻船問屋は大変裕福であったと伝えられています。たとえば、須賀の廻船問屋中村安兵衛は通称「赤椀安兵衛」と呼ばれ、銭でお金を勘定するほど羽振りが良かったと言い伝えられています。また、先述の米屋嘉兵衛は宝永3年(1706)の財産目録では1671両余の財産が書き上げられていました(当館寄託資料)。
 ただ、彼らは富者として非常時には自らの富を放出し、居住地の窮民を救助することが期待されました。天保7年(1836)7月、大磯宿の廻船問屋川崎屋孫右衛門は天保饑饉による米価高騰に苦しむ宿民の米値下げ要求に応じなかったため、宿民により居宅・土蔵が打ちこわされてしまいました(『大磯町史』2巻No91)。一方、柳島の廻船問屋藤間家は、大磯宿川崎屋の状況を意識してか同年11月、米価高騰により、「民必至と難渋」しているとして「村方貧窮の百姓」へお金や麦を施与しています(『茅ヶ崎市史』1巻No119)。
 

【参考文献】
 2009年度秋期特別展図録「山と海を結ぶ道-相模川・相模湾の水運」

 西川武臣「近世の相模川・相模湾水運―津久井・須賀・柳島・神奈川―」(『平塚市博物館研究報告 自然と文化』33号 2010年)
 早田旅人「近世相模川・相模湾水運における須賀村の位置」(『平塚市博物館研究報告 自然と文化』36号 2013年)


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