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相模川の生い立ちを探る会 第260回 2014年10月 「鈴川と渋田川の河川争奪(上粕屋)」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第260回 2014年10月12日 伊勢原市上粕屋~西富岡



■ テーマ:鈴川と渋田川の河川争奪(上粕屋)
■ コース:伊勢原市上粕屋 大坪橋~子易明神比々多神社~産業能率大学~西富岡 伊勢原市総合運動公園

 今回の野外観察会は、伊勢原市上粕屋にある明神前バス停付近の、新東名高速道路工事現場から始まりました。最初に、前回のおさらいと今回の狙いについて説明がありました。前回の野外観察では、日向川、七沢川、玉川周辺の地形を観察し、日向川が現在とは異なり南流して渋田川に流れていた時期があったこと、一方、玉川は南北に走る伊勢原断層を切って東流しており、伊勢原断層の活動以前から東に流れていたこと、などを学びました。それを踏まえ、今回は前回より南の地域を流れる鈴川や渋田川支流沿いの扇状地や段丘地形を観察して、過去の流路変更とその原因を探ることが目的でした。
 午前中は伊勢原市上粕屋地域を流れる鈴川流域の観察が主でした。鈴川沿いの上粕屋扇状地は、かつての鈴川が作ったと考えられ、等高線の形状からは、かつて鈴川が東流していたことが伺えるとのことでした。上粕屋扇状地周辺では、沖積面、低位面(2段)、中位面(3段)、高位面が観察できました。鈴川にかかる大坪橋付近では、鈴川の作った中位面の段丘崖に、厚さ約5~6 mの段丘礫層が露出しているのが観察できました。礫は最大で径60 cmにも達し、鈴川の源流である丹沢山地を構成する、丹沢層群煤ヶ谷亜層群の火山礫凝灰岩礫が主であるとの説明を受けました。またこのすぐ北にある新東名高速道路の工事現場には、段丘礫層の礫と思われる、直径1 m以上の巨礫が積んであるのが観察できました。ここでは沖積面と中位面の比高を、ハンドレベルを使って測定しました。また鈴川左岸は、子易明神比々多神社の建つ中位面で、その北の高位面の段丘崖を確認できました。比々多神社では、七沢石(丹沢層群煤ヶ谷亜層群大沢層の火山礫凝灰岩)でできた玉垣を観察しました。中位面沿いに県道611号線を歩いていると、南東に向かって中位面の高度が下がっていくのがわかりました。
 午後には産業能率大学の北側を流れる渋田川の支流沿いを歩き、沖積面、低位面、中位面を観察しました。現在、新東名高速道路の工事およびそれに伴う遺跡発掘調査が行われているため、渋田川支流沿いは広く開析されており、産業能率大学前からは川沿いの段丘地形が一望できました。渋田川支流の左岸を東に歩くと、対岸の段丘面とそれらの段丘崖が観察できました。道路沿いには段丘崖が崩落した滑落崖がみられ、2014年10月6日の台風16号による地滑りによるものと思われました。さらに東に進むと渋田川支流沿いの道路上から、中位面の段丘崖に露出する高さ約8 mのローム層の露頭が観察できました。
 今回の野外観察会では、当初の目的である河川争奪の影響こそはっきりとらえることはできなかったものの、段丘地形を高所や低所から様々な角度で見ることができ、段丘の規模や分布を直感的にとらえられたという点で、非常にわかりやすい地形観察ができたものと思います。 (A. N.)
                    

鈴川の中位段丘を作る段丘礫層の露頭を観察する (上粕屋明神) 鈴川の中位段丘を作る段丘礫層の露頭を観察する (上粕屋明神)
▲鈴川の中位段丘を作る段丘礫層の露頭を観察する(上粕屋 大坪) ▲鈴川の中位段丘を作る段丘礫層(上粕屋 大坪)
鈴川の沖積面と中位段丘面の比高をハンドレベルで測定する(上粕屋明神) 鈴川流域の地形を展望する(上粕屋宗源寺)
▲鈴川の沖積面と中位段丘面の比高をハンドレベルで測定する(上粕屋 大坪) ▲鈴川流域の地形を展望する(上粕屋 宗源寺)
七沢石からなる比々多神社の玉垣は、いろいろな色調の火山礫を含む< 道路(低位段丘面)から鈴川と沖積面を望む。低位段丘面と沖積面の比高は約5~6 mであった
▲七沢石からなる比々多神社の玉垣は、いろいろな色調の火山礫を含む ▲低位段丘面から鈴川と沖積面を望む(上粕屋 石倉上)
渋田川支流沿いの沖積面、低位段丘面、中位段丘面(上粕屋神成松) 地形図を見ながら段丘地形とその高さを確認する(上粕屋神成松)
▲渋田川支流沿いの沖積面、低位段丘面、中位段丘面(上粕屋 神成松バス停西) ▲地形図を見ながら段丘地形とその高さを確認する(上粕屋 一ノ郷南)
地すべりによると思われる崩落地形(2014年10月6日の台風18号による?)(上粕屋神成松) 渋田川支流沿いの中位段丘面の段丘崖に露出するローム層の露頭を観察する(上粕屋秋山橋)
▲地すべりによると思われる崩落地形(2014年10月6日の台風18号による)(上粕屋 和田内) ▲渋田川支流沿いの中位段丘面の段丘崖に露出するローム層の露頭を観察する(上粕屋 和田内下)
上粕谷扇状地(扇端部)と日向扇状地の合流部の地形(西富岡 総合運動公園入口) 北側から道路に沿うように延びる伊勢原断層の断層崖(西富岡 総合運動公園)
▲上粕谷扇状地(扇端部)と日向扇状地の合流部の地形(西富岡 長竹 伊勢原市総合運動公園入口西方) ▲南北に走る道路に沿うように延びる伊勢原断層の断層崖(西富岡 総合運動公園バス停前)


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