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相模川の生い立ちを探る会 第259回 2014年9月 「日向川と渋田川の河川争奪」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第259回 2014年9月28日 伊勢原市日向~厚木市七沢



■ テーマ:日向川と渋田川の河川争奪
■ コース:伊勢原市日向~厚木市七沢「神奈川県立自然環境保全センター」~伊勢原市日向はつみ坂

 今回の目的は、伊勢原市と厚木市の境にある日向川・玉川(七沢川)沿いを歩いて、段丘地形や地層の観察を行いながら、かつて南流して渋田川に流れていたと推定される日向川が、なぜ伊勢原市日向で東流して相模川に流れるようになったのか、また伊勢原台地西縁を区切る伊勢原断層の活動との関連はどのようなものであるか、について考えることでした。
 まず、伊勢原市日向の諏訪坂下バス停より、日向川南にある段丘の中に孤立した小高い丘に登る途中で、南北方向に走る伊勢原断層の断層地形と、日向扇状地の地形を展望しました。この小丘の標高130 m地点で、デイサイト質軽石火山礫凝灰岩の露頭を観察しました。この地層は丹沢層群煤ヶ谷亜層群の大沢凝灰岩層で、火砕流堆積物であろうと森先生より伺いました。また、断層条線や層理と節理(割れ目)の違いについても教わりました。
 藤野バス停入口では比高数 mの段丘が3段みられました。これはかつての日向川の段丘と考えられるとのことですが、北東にある神奈川県内広域水道企業団伊勢原浄水場付近の段丘面(中位面)よりも、はるかに高い位置にあることから、中位面より古い高位面ではないかとの説明を受けました。高位面に沿って山裾を進むと、デイサイト質火山礫凝灰岩からなる大沢凝灰岩層の露頭が観察できました。この露頭では、風化による玉ねぎ状構造が観察でき、大きいものでは玉ねぎの直径が1.5 m大に達するものがみられました。その上位にはローム層が不整合に重なっているのが観察できました。高位面の段丘を作るローム層ですが、基底に礫層は確認できませんでした。
 さらに進み、日向川の中位面が広がる右岸から、右岸沿いの下位面や、伊勢原浄水場が建つ対岸の中位面を観察しました。日向川右岸の中位面上からは、日向扇状地の東縁を走る伊勢原断層の断層崖を展望しました。日向川にかかる落合橋周辺では中位面、低位面および沖積面を観察しました。伊勢原浄水場の周回路北側より、厚木市七沢にある神奈川県立自然環境保全センター併設の自然観察園に入り、観察路沿いの小川で露頭を観察しました。主にローム層の露頭が露出していましたが、一部では基盤岩である粗粒凝灰岩が河床に露出しているのも確認できました。基盤岩の上には水中で堆積した水成ローム層が直接重なっており、基底の段丘礫層は認められませんでした。その後、県立自然環境保全センター本館に立ち寄りましたが、地質に関する展示はありませんでした。県道64号線では、伊勢原断層の北方延長である牧馬-煤ヶ谷構造線の断層地形を遠望しました。また、七沢川右岸で低位段丘を観察し、沖積面との比高(5.5~6 m)を確認しました。玉川小学校前の奨学橋からは、七沢川と日向川の合流部が確認できました。県道64号線に戻り、伊勢原市日向のはつみ坂バス停近くで、日向川の中位面や、七沢川と日向川の合流部付近での牧馬-煤ヶ谷構造線と伊勢原断層の東西のズレを遠望しました。広い段丘をなしているにもかかわらず、河川が全くないのが不思議でしたが、扇状地の伏流によるものとお聞きして納得しました。
 夕闇も迫ってきて、この場所で先生に、以下のような巡検のまとめをしてもらいました。
・観察した丹沢の上部を作る地層はデイサイト質火砕流堆積物が多く見られます。東丹沢ではデイサイト質の溶岩はありません。
・日向川は、かつては伊勢原断層に沿って南流していたと考えられますが、約6万年以降に、奨学橋付近で愛川層群を東西に切って東へ流れるようになったと考えられます。
・日向扇状地は約6万年前に形成されたと考えられる広い中位面が主で、3~4段に区分されそうです。七沢川沿いには低位面が良く発達していました。 (K. K. & S. M. )
                    

南北に走る伊勢原断層崖を展望する 伊勢原断層の段丘地形と日向扇状地に広がる田園風景
▲南北に走る伊勢原断層の断層地形を展望する(日向 洗水) ▲伊勢原断層の段丘地形と日向扇状地に広がる田園風景(日向 洗水)
デイサイト質軽石火山礫凝灰岩の露頭を観察する 高位段丘面より伊勢原浄水場のある中位段丘面を展望する
▲デイサイト質軽石火山礫凝灰岩の露頭を観察する(日向 洗水) ▲高位段丘面より伊勢原浄水場のある中位段丘面を展望する(日向 藤野入口バス停北東)
タマネギ状構造が発達する大沢凝灰岩層の露頭 伊勢原浄水場の中位段丘面とそれより低位の日向川右岸の段丘面
▲タマネギ状構造が発達する大沢凝灰岩層の露頭(日向 藤野入口バス停東方) ▲伊勢原浄水場が建つ中位段丘面(奥)とそれより低位の日向川右岸の段丘面(手前)(日向)
日向扇状地の段丘面上から東方、伊勢原断層の断層崖を望む 日向川の低位段丘面望む
▲日向扇状地の段丘面上から、東方にある伊勢原断層の断層崖を望む(日向 原田) ▲日向川の低位段丘面を望む(日向 落合橋南)
日向川扇状地の扇央部に近い伊勢原浄水場 河床の粗粒凝灰岩露頭を観察する
▲日向川扇状地の扇央部に近い伊勢原浄水場 ▲河床の粗粒凝灰岩露頭を観察する(厚木市七沢 自然観察園)
牧馬-煤ヶ谷構造線の断層地形を望む 七沢川と日向川の合流地点、ここより玉川になる(七沢奨学橋)
▲牧馬-煤ヶ谷構造線の断層地形を望む(七沢 県立自然環境保全センター東方) ▲玉川小学校前で七沢川と日向川が合流し、ここより下流が玉川になる(七沢 奨学橋)


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