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相模川の生い立ちを探る会 第242回 2013年4月 「 江ノ島の海食洞と葉山層群 」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第242 2013年4月14日 藤沢市江ノ島



■ 江ノ島の海食洞と葉山層群
コース:藤沢市境川河口~江ノ島南東海岸~聖天島~モースの家跡~山二つ~恋人の丘

 今年度のテーマは「湘南海岸の地形と地層」です。 江ノ島は中新統の葉山層群からなり、不整合をなす隆起波食台の上に関東ローム層が堆積してます。今回は、江ノ島の新しい波食台や海食洞を観察し、地盤の隆起を物語るヤッコカンザシを探すことを目的に実施しました。ヤッコカンザシはゴカイの仲間で、汀線付近に炭酸カルシウムからなる巣穴を作って棲息します。地震によって隆起した場所にヤッコカンザシの棲管の化石があると、かつての汀線がどれくらいの高さまで隆起したのかがわかります。
 現生ヤッコカンザシは東海岸のコンクリート護岸壁や小松石の波消し石などで観察できました。ヤッコカンザシは40~50 cm幅に分布し、ヒザラガイ・スガイ・カサガイなどと共生し、上位にはイワガキが分布していました。 南東海岸の波食台では岩盤の割れ目などで観察できました。現生ヤッコカンザシの棲息場所では、海水面上の分布高度を測定し、測定時の時間の記録もとりました。海面上1.1~1.7 mでも波浪のある波食台上にはヤッコカンザシが棲息していることがわかりました。化石ヤッコカンザシは南東海岸の転石のみに認められました。
 南東海岸では3 箇所で海食洞の基底高度を測定しました。その結果、海面上3 m前後に洞窟基底があることがわかりました。 これらの海食洞はいつ形成されたのか、議論になりました。先生より、「これらの海食洞が縄文海進期(約6500年前,海岸線が陸側に前進していた時期)に形成されたと考えると、0.5 m/1000 年となり、 江ノ島の海成段丘である三崎面(6 万年前)の高度から求められる変位速度(0.5 m/1000 年) と同様になる」と解説がありました。
 また、海食洞前に数段の小規模な段丘状地形が確認され、「元禄段丘などを示しているのではないか」 と解説されました。波食台を作る葉山層群や、黒筋状の逆断層群についても解説がありました。
 干潮時間帯の南東海岸での観察を終了して、聖天島の水平層(上総層群)、山二つのローム層を観察してから南西海岸に向いました。 南西海岸は強風のため波が高く立ち入り禁止になっており、稚児ヶ淵、岩屋参道橋上からの遠望観察になりました。 最後に恋人の丘入口で、本日のまとめと新会員のためにガイダンスを行いました。 (N. S. )

               

現生ヤッコカンザシの海面からの高さを測定 江ノ島南東海岸にみられる葉山層群と隆起波食台を覆うローム層
▲現生ヤッコカンザシの棲管の高さを海面から測定する。 ▲江ノ島南東海岸にみられる葉山層群と隆起波食台を覆うローム層。
江ノ島南東岸で波食台高度を調べる 現生のヤッコカンザシの棲管
▲江ノ島南東海岸で波食台高度を調べる。 ▲現生のヤッコカンザシの棲管。
海食洞の高さを測定する 断層に沿って発達した二つの海食洞
▲海食洞の高さを測定する。 ▲断層に沿って発達した二つの海食洞。
かつて汀線付近であったことを示すヤッコカンザシの化石 モースの家の前でかつての海岸と埋め立て地の比高を測定する
▲かつて汀線付近であったことを示すヤッコカンザシの化石。 ▲モースの家の前でかつての海岸と埋め立て地の比高を測定する。大正関東地震の際の隆起を示す。
江ノ島南西岸にみられる葉山層群の波食台 聖天島にみられる水平な上総層群
▲江ノ島南西海岸にみられる葉山層群からなる波食台。 ▲聖天島にみられる水平な上総層群。


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