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相模川の生い立ちを探る会 第207回 2009年12月 「相模湖の玄武岩」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第207回 2009年12月20日 相模湖北岸



■ テーマ:相模湖の玄武岩
■ コース:相模原市緑区小渕 弁天橋~日蓮大橋~藤野駅

 相模湖周辺には名倉玄武岩という地層が分布していることが知られています(本間, 1991)。この地層は北側の関東山地を作る小仏層群と南側のトラフ充填堆積物である石老山礫岩層に挟まれているにもかかわらず、丹沢山地を作る火山性の岩石と類似した玄武岩からなっています。この玄武岩は丹沢山地にみられる玄武岩と同様に、南の海底火山で生まれたものでしょうか、あるいは、伊豆・小笠原弧の火山島として生まれた丹沢が北上して現在地に来てから、トラフ充填堆積物が堆積する間に、玄武岩活動があったのでしょうか?。
 藤野駅から相模川に降りていくと、対岸に数段の段丘地形がよく見え、道路沿いに段丘礫層もみることができました。段丘礫層はその当時の河床礫ですから、現在までの間に相模川が深く下刻したことを物語っています。
 弁天橋を渡ると、相模湖南岸に沿って玄武岩層が露出していました。カンラン石が多量に含まれているのが特徴です。この玄武岩は極めて厚く、部分的に角礫岩となっていました。角礫岩は玄武岩溶岩と同質の礫からのみなっています。こうした角礫岩は、溶岩が水中で破砕されて生じたもので、ハイアロクラスタイトと呼ばれます。全体から見ると、1枚の玄武岩の厚さは20 mほどと思われ、玄武岩溶岩とハイアロクラスタイトとの互層からなっているように見えました。地層は東西の走向を持ち、玄武岩とその火砕岩の厚さは200 mを越えそうです。貫入岩として地下から突き抜けてきたものではなく、ハイアロクラスタイトを多量に伴うことから溶岩流となって流れたものであることがわかりました。丹沢の凝灰岩類(グリーン・タフ)と比べると、岩相が甚だしく異なっており、丹沢火山体の活動とは異なる時期のものである可能性があります。この名倉玄武岩は年代が明らかにされていませんが、近年、丹沢衝突期ないし衝突後に丹沢で新たな火成活動があったことが明らかになっていており(例えば、森ほか, 2012)、そうした新しい火成活動を示すものかもしれません。(S. M. )

文献:
本間岳史 (1991) 関東山地南縁における中~後期中新世の構造運動と火成活動.地団研専報,38, フォッサマグナの隆起過程, 27-37.
森 慎一・山下浩之・有馬眞・藤岡換太郎 (2012) 丹沢-大磯地域に分布する火山岩類のK-Ar年代と南部フォッサマグナ地域における鮮新世火山フロントの西方移動.岩石鉱物科学 41,(3), 67-86.

相模川の段丘礫層を観察する 弁天橋から相模川上流の段丘地形を望む
▲相模川の段丘礫層を観察する(藤野駅南) ▲弁天橋から相模川上流側の段丘地形を望む
弁天橋南詰に露出する奈倉玄武岩 奈倉玄武岩の露頭(弁天橋東)
▲弁天橋南詰に露出する名倉玄武岩層 ▲名倉玄武岩の露頭 (弁天橋東)
玄武岩質ハイアロクラスタイトの露頭 ハイアロクラスタイトのタマネギ状風化
▲玄武岩質ハイアロクラスタイトの露頭 (名倉) ▲ハイアロクラスタイトのタマネギ状風化(名倉)
玄武岩質粗粒凝灰岩を観察する 節理の発達した玄武岩質粗粒凝灰岩
▲玄武岩質粗粒凝灰岩を観察する (名倉) ▲節理の発達した玄武岩質粗粒凝灰岩(名倉)
トラフ充填堆積物である石老山礫岩 湖岸の玄武岩の露頭
▲トラフ充填堆積物である石老山礫岩(名倉) ▲湖岸の玄武岩の露頭(名倉)


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