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相模川の生い立ちを探る会 第201回 2009年5月 「三浦の三浦層群 (天神島)

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第201回 2009年5月30日
 横須賀市天神島



■ テーマ:三浦の三浦層群 (天神島)
■ コース:横須賀市佐島マリーナ入口~天神島~観音鼻~佐島入口

 今回は、三浦半島の佐島付近に見られる三浦層群の地層を見て、岩相や凝灰岩鍵層、火山豆石などを観察することが目的でした。
 まず、佐島マリーナ入口のバス停を降りて海岸線を西に進み、佐島地区の露頭に向かいました。神明社の鳥居の先で道路が大きく北へカーブしたあたりで、白色凝灰岩の露頭を観察しました。ここより200 m程北の露頭までは地層が東西走向南傾斜でしたが、その100 m先では、北傾斜になっていました。森先生からこの2つの露頭の中間付近に背斜軸があるようだと解説がありました。地層は白色の軽石凝灰岩を数枚挟む泥岩層で、逆断層で地層がずれていました。その後、天神島へ向かいました。天神島は、島全体が横須賀市自然・人文博物館付属の天神島臨海自然教育園として整備されていました。海岸に広がる露頭はスコリア層に富む泥岩互層でしたが、一見すると黒一色に見えました。地層を観察しながら島を巡り、先生より詳しい説明を聞きました。逆断層、褶曲で逆転した地層、火山豆石、斜交葉理などが見られました。天神島の地層は、一般に南西に傾斜していますが、天神島臨海自然教育園入口付近から北側は北東に急傾斜しており、ここにも背斜構造があるとのことでした。火山豆石は、火山活動の噴煙の中で、火山灰が同心円状に丸く固まって形成されたもので、給源から20 km以内に分布しているそうです。斜交葉理は、層理面に斜交する葉理構造で、水流の働きで形成されます。隣接する天神島ビジターセンターにも寄り、海岸植物、魚類の標本や写真、漁撈用具などの展示を見学しました。
 次に観音鼻に向かいました。小田和湾に面した大楠港内に、北東-南西方向に岩場が並んでいるのがみられました。これは、葉山層群の細粒凝灰岩でした。大楠港東側にある観音鼻の岩場で、白色凝灰岩の露頭を観察しました。この凝灰岩は三崎層中の鍵層で、層厚10~50 cmの軽石質凝灰岩層数枚からなっていました。この凝灰岩は江藤ほか(1998)ではOk(大楠山)凝灰岩とされていますが、蟹江ほか(1991) ではKn (観音鼻) 凝灰岩と呼ばれています。観音鼻から北東へ800 mほどにあるトンネル北東側出口には、厚い凝灰岩層からなる佐島石の石切場も見られました。
 今回は、天神島周辺で三崎層の付加体の変形構造、逆断層、凝灰岩鍵層、火山豆石などを観察しました。盛りだくさんの内容で、有意義な1日となりました。(N. S. & S. M.)

文献:
江藤哲人・矢崎清貫・ト部厚志・磯部一洋 (1998) 横須賀地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,128p.
蟹江康光・岡田尚武・笹原由紀・田中浩紀 (1991) 三浦・房総半島新第三紀三浦層群の石灰質ナノ化石年代および対比.地質学雑誌, 97, 135-155.

火山灰層と白い軽石凝灰岩層が逆断層でずれている 天神島の海岸に広がるスコリア層に富む泥岩との互層
▲火山灰層と白い軽石凝灰岩層が逆断層でずれている(佐島 3丁目) ▲天神島の海岸に広がるスコリア層に富む泥岩との互層 (天神島)
画面中央部で地層の傾斜が逆転している スコリア層中に見られる火山豆石
▲画面中央部で地層の傾斜が逆転している (天神島) ▲スコリア層中に見られる火山豆石 (天神島)
左から右 北西→南東 への水流を表す層理面に斜交する斜交葉理 スコリア層に挟まれた白色凝灰岩層を観察する
▲左から右(北西→南東)への水流を表す層理面に斜交する斜交葉理 (天神島) ▲スコリア層に挟まれた白色凝灰岩層を観察する (天神島)
大楠漁港内に北東方向で並ぶ葉山層群の細粒凝灰岩の岩礁 火山灰鍵層 Kn をはさむ三崎層の露頭
▲大楠漁港内に北東方向で並ぶ葉山層群の細粒凝灰岩の岩礁 ▲火山灰鍵層 (Kn) をはさむ三崎層の露頭 (観音鼻)
Kn凝灰岩の1枚である軽石質凝灰岩層 佐島石の石切場
▲Kn凝灰岩の1枚である軽石質凝灰岩層 (観音鼻) ▲佐島石の石切場 (佐島隧道東)


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