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地誌から物理観測へ

火星大接近 2003 (火星観測史)

地誌から物理観測へ

平成15年秋季特別展図録 平成15年10月発行

 20世紀には、望遠鏡の大型化に加え、新たな技術、写真観測や分光観測がさかんになり、たとえば光のスペクトルからそこに含まれる物質を割り出そうという試みがなされました。しかし期待されるような成果(地球に似た惑星環境)はなかなか得られず、大気には酸素や水蒸気より卓越する二酸化炭素が検出されました。波長による観測から、暗色模様は水ではないということもわかってきました。そうして火星は、地球とはだいぶ環境が異なる星だということが予測されるようになってきたのです。それは生命の繁殖には不利であることを意味し、火星生命の可能性は「火星人」から植物、苔類などに、だんだんしぼんで行きました。
 ばくぜんとした状態のとき、人はまず自分の知っているものをそれに当てはめようとするものです。地動説の時代が来て、地球が惑星のひとつだと知ったとき、人はまず火星に、地球に類似した環境を想像しました。それが、望遠鏡観測や物理観測を通して、少しずつですがほんとうの顔を見せはじめたとも言えるでしょう。しかし、地球大気を通しての地上からの観測では、それはまだまだ霧の中に見え隠れするようなものでした。
 火星という惑星が、霧のベールを脱ぎ、その環境を人類の前にあらわにするのは、20世紀後半、探査機による接近観測という、かつての望遠鏡の発明に匹敵する方法が行なわれてからになります。

ウィルソン山150cm反射望遠鏡(1907年完成)


ウィルソン山150cm望遠鏡+色フィルターによる火星
(左上/左下−オレンジ、右上−赤、右下−青)


望遠鏡に取り付ける分光写真機(ブレラ天文台)
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