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_太鼓の革

平塚のお祭り −その伝統と創造− (I)

 太鼓の革



 太鼓が盛んな所は毎年締太鼓の革を購入している。革は1枚35.000円〜40.000円ぐらいする。これを年間2枚〜4枚、稀にそれ以上購入する所もある。強く張るので革を破きやすく、新しい革の方が鳴るためである。昔は青年会や青年団で水路に稲を植え、収穫した米を売って革を買う資金にした。根坂間では13俵を収穫し、3俵は災害用の非常米としてムラへ出し、10俵を米屋に売ってコバチ(締太鼓)の革を買いに行った。
 革は鳴る革と鳴らない革がある。根坂間では、20枚のうち鳴る革は2枚ぐらいしかないといわれていて、太鼓店へ行き、目をつぶって手触りで選んだ。革を選ぶポイントはいくつかあり、豊田西町では、次のように言っている。厚みが平らであること。触ってみてざらついているのが良い。ざらつく革は脂が抜けている。光にかざしてアブ穴があいているのが良い。アブ穴とはアブが刺したような穴のことである。革が筋張っているのが良いなどと言う。牛の部位では、背中がいちばん良く、次に腹である。首のだぶだぶした部分は丈夫だが音が出ないという。昔は農耕で使った粗食の牛が良かった。こうして吟味して選んだ革でも、当たり外れがあり、鳴らないこともある。西町では締めても鳴らない革をクソッ革といい、お祭りの勝負では通用しない皮である。
 昔はお祭りの一カ月近く前から、夜になると青年が集まり、太鼓を叩いた。練習と、革を伸ばすためであった。毎晩叩き込んでは締め、少しずつ革を伸ばして締めた。現在は子供の練習が多いので、練習だけではあまり革が伸びない。そこで、締め始めの頃は太鼓の上に体重をのせて足踏みし、締まってくるとカケヤで叩いて伸ばす。豊田西町では、子供が練習している間、毎晩2時間カケヤで太鼓を叩く。革を伸ばさないと、「音は出るけど、音は出ない」という。
 革を締める時は表と裏は決めず、両面とも新しい革で締める。締めて初めて表と裏ができる。音の良い方を表にし、裏面は使わない。翌年、裏と裏を組んで締め、鳴り具合を試してみる。
 革は縫い目に負担がかかる。豊田西町では、革を八分通り締めたら、どの目にどの程度負担がかかっているかを注意し、弱くなった縫い目にボンドを塗って補強する。そうしてお祭りの本番直前に、破れる寸前まで、95%ぐらい締める。このときは真剣そのもので、周りでじっと見守り、慎重に締める。ボルトを回して軽く感じたり、耳を近づけてチリチリと鳴る音が聞こえたら、革の繊維が切れた時である。その部分には目印を付け、そこはそれ以上締めないようにする。細心の注意を払わないと、締めすぎて「ボコッ」と破いてしまう。
 太鼓は丁寧に扱う。太鼓の休憩中は必ず毛布を掛ける。使用しない時はボルトをゆるめ、革を毛布にくるみ保管する。かつて大島では、太鼓のお付き合いに行く時は、十分に締めた太鼓を布団にくるみ、南京袋に入れて持っていったという。
 革は湿度の変化を嫌う。雨天時は革が緩むので、強めに締めておくが、鳴りは悪くなり、雨の日はあまり気分が乗らないという。直射日光も厳禁で、強く張っていると、乾燥して革が破けることがある。雨の日に、急に日が照ったり、乾いた風が吹いたりしたときも、破ける虞れがある。

太鼓を踏む(北金目北久保) 撮影 2004.4.17


ハンマーで叩く(豊田西町) 撮影 2004.9.22


ぎりぎりまで皮を締める_耳で聞く(豊田西町) 撮影 2004.10.2
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